<武蔵森編>





「あれ?、その携帯、どこの?」
「ああ、クロス(Xと書いてクロスと読む)のだけど。」
「マジ?俺もクロスの携帯だけど、その携帯、見た事ないんだけど?」
「ああ、新しく開発された試作品だよ。」
「すげー。どこで手に入れたんだよ。」
「え、まあ、家族が・・・。」
「何?の父さん、クロスで働いてるの?」
「・・・あ、そうなんだよ。(兄さんが黒須グループの会長って言っても信じないだろうね)」
「へー、どんな機能が付いているの?」
「うーん、この携帯の目玉は着声作成機能なんだよ。」
「着声?」
「うん。好きな声を録音して、指定着信音に設定できる機能。」
「じゃ、俺が『メールが着てるよ〜』とかって録音すれば、俺からメールが来た時、その着信音が鳴るの?」
「そうだよ。」
「面白そう〜。ね、録音していい?」
「ああ、モニターも兼ねているから、使ってみようか。」


藤代誠二、新しい物好き。









『イエーイ。セージ君からお便りでーす♪』


「・・・。今のお前の着信音か?」
「はい。録音出来るんですよ。」
「お前と藤代って同じ寮にいるのに、よくメールしてるよな。」
「誠二はメールが好きですからね。」
「メール来る度に藤代の声ってウザくないか?」
「特には。三上先輩はウザいんですか?そもそもウザイって何ですか?」
「ああ、お前、この前までイギリスにいたんだよな。ウザイっていうのはな・・・」


三上亮、ウザイについて説明。









『俺様からのメールだ。ありがたく受け取れ。』


「・・・・・・・・なあ、。今のは何だ?」
「メールの着信音ですけど?」
「み、三上の声だったんだが?」
「ああ、そういう機能なんです。三上先輩からメールが来ると、今の着信音が鳴るんです。」
「他にはあるのか?」
「誠二のがありますよ。渋沢先輩、聞いてみます?」
「大体の見当はつくが、聞いてみるかな?」


藤代の着声、演奏中♪


「・・・予想通りな着信音だな。」
「そうですか?あ、渋沢先輩も折角だから録音します?」
「それは構わないが、俺は藤代や三上にように面白くは出来ないぞ?」
「誠二も三上先輩も普通に録音してましたけど?」


渋沢克朗、後輩とルームメイトが素で面白い人間だった事を再認識する。









『メールだ。うーん、後、何を話せばいいんだろうな。あ、、今度一緒に料理でも作らないか?』


「・・今の何?」
「渋沢先輩からのメールの着信音だけど?」
「メールだ、までは普通だったんだけど、後の何?」
「うーん、録音して貰う時に何を話したらいいのか、渋沢先輩、わからなくなったんだって。」
「渋沢先輩。スピーチとか慣れているか、こういうの上手いと思ったんだけど?・・・あ、機械関係は駄目だったっけ?」
「うん。でも三上先輩が得意だから、ちょうどいいんじゃない?」
「今時、ビデオの配線も繋げないのはどうかと思うけど?・・・ようやく、メールは出来るようになったみたいだね。」
「うん。最近、よく来るよ。」
「ところで、メールが来る度に、は渋沢先輩の所に料理作りに行っているの?」
「そういうわけじゃないけど・・・」
「・・・意味のないセリフだね。」


笠井竹巳、自分こそは普通に録音しようと心に決める。








『メールが届いたよ。開封、よろしく。』


「だ〜〜〜、タクの奴、面白くない!」
「別に面白くなくてもいいんだよ。着信音なんだから。」
「でもさ〜。三上先輩や渋沢先輩は面白いのに。」
「竹巳らしい着声だと思うけど?」
「面白くない!面白くない!面白くない〜!あ、そうだ。明日、桜上水に行って録音して来ようぜ!」
「僕は構わないけど、明日、誠二は補習だよ。」
「・・・そうだった。じゃ、後で聞かせてよ。」
「僕、1人で桜上水に行くの?」
「うん。・・・あ、さっき風祭にメール送ってOKは貰ったから。」
「・・・・・誠二ってメール作るのと走るの、早かったんだよね。」
「そうだよ。あ、。」
「何?」
「竹巳が言ってた『カイフウ』って何?」


、開封の意味のわからなかった藤代の策略(?)で桜上水に行く事が決定。