「この間、街でスカウトされたの」
「へぇ、何の?」
「女優さん」
「・・・普通の女優だよな?」
「うん、普通のAV女優さん」
「・・・・・・それは普通って言わねぇ」


シャワー室で一戦交えて、疲れてぐったりしたの体をバスタオルで拭いて、布団の中に横たえれば、しばらくして朦朧としていた意識を回復させたは、パチパチと瞬きをした後、取り止めの無い話をし出した。水分補給しながら新しく出来たパスタ屋が当たりだったとか、行きつけの美容院のいつも担当してくれた人が結婚するとか、そんな話をしていただけなのに、思い出したようには大きな爆弾を落とした。


「勿論断ったんだろうな」
「当たり前でしょ」


「あんなお金じゃ無理無理」と言うにがっくりと肩を落とす。冗談だってわかっているけど、ここはもっとこう―――「一馬とじゃないと嫌」くらい言って欲しいのに。


「ちなみにいくら?」
「200万」
「ふーん」
「高いと思う?安いと思う?」
「俺の感覚から言えば安い」


そう言えば、「一馬は高給取りだもんなぁ」とは笑う。確かに俺の年でこの収入は高給の類に入るけど、高給云々抜きにしてもその額は安いと思った。まぁ、他人に彼女に値段付けられた気がして嫌だけど。のカラダに200万は安い。俺、と結婚出来るなら、年棒そのまま捧げたって良いって思ってる。


「ああいうスカウトの人ってどういう基準で女の子に声掛けてるんだろう?」


「そんな節操無しに見えるかなぁ」とは少しだけ沈んだ声で言った。内情を知る身としては、顔も見た事も無いスカウトマンに薄っすらと怒りを覚える。中学の時から付き合ってるけれど、にとっても俺にとってもお互い初めての彼氏彼女で、今日まで別れる事無く順調に付き合っているので、相手以外他の異性を知らないと言うのが現状だ。


は結構可愛いし、胸もあるからそういう方面の奴らには特に魅力的に見えるんじゃねぇの?」


実際、は可愛い。小顔に大きくぱっちりとした目が印象的で、彼氏の贔屓目抜きでも可愛いと思う。背は普通なんだけど胸は大きくて、身長が180cm近い俺の手のひらにやっと収まるサイズなんだから凄い。巨乳好きの結人が羨ましいとか良く言うけど、こっちは大きかろうが、小さかろうがの胸なら何だって良いんだから。まぁ、大きくて肌白くて触り心地良いから好きだけどな。


「そう・・・かな?」
「そうだって」


ぎゅっと抱き締めれば、シャワーの熱でのぼせたの体は熱かった。俺の方が体温が低いせいだろう。「気持ち良い」と少し擦れた声が聞こえる。


「なぁ、もう1回して良い?」


の声にそそられて、そうねだれば、はにっこりと笑って「まだ、だーめ」と断られた。会話はまともに出来るものの、シャワーの熱で完全にのぼせたらしく、頭がグラグラするらしい。枕やクッションをベットの一箇所にまとめてそこにを移動させると、ミネラルウォーターを渡して冷水で濡らしたタオルを絞って額の上に置いた。


「ありがとう、一馬」


「好きよ」と言って頬にキスされた。頬から唇が離れ、耳元で囁かれる。


「一馬以外の人に抱かれるなんて嫌だから」


そんな可愛い事を言う愛しい恋人に俺も最大級の気持ちを込めて、唇にキスを落とした。