今年の入学式は4月7日だった。


翌日が休日で無い限り、始業式はその次の日と決まっている。新しいクラスが発表されるのも今日だ。1年で1番早起きして登校する生徒が多い日。


私、の予想を裏切る事無く、例年通り20分早い時間に家のチャイムが鳴った。幼稚園の時からずっと一緒の幼馴染も例に漏れず、早々と学校に行く1人です。


「今年は何組かな」
「何組だろうね」


幼馴染にしてお隣さんである山口圭介とこうしてこの道を並んで歩くのも早3年目。幼稚園の頃、一緒の通園バスに乗り。小学校の頃、一緒に登下校し。中学年の頃、一緒に登下校する事をクラスの男子にからかわれて一緒に歩かなくなって。高学年の頃、再び登下校するようになって。その習慣は中学校に上がってからも変わらず続いている。




圭介はモテるらしい。一緒に登校すると下駄箱に手紙が入っている。クラスに呼び出しに来た女子も見た事がある。学校行事の時には1番多く女子の声援を貰っている気がする。でも、圭介はまだ誰とも付き合っていない。しかし、いつか付き合う人が現れるとは思っている。春休み前、クラスメートの1人が彼女が欲しいと言っていた際、同意していた。意外と圭介がその気になって作ろうと思えば、あっさり出来るだろう。それだけ多くの人間が横を歩く幼馴染に夢中だ。


彼女が出来たらこうして登下校する事も無くなるだろう。そう思うと少し寂しく感じるが、クラスの男子にからかわれて一緒に帰る事を拒否されたあの日、幼馴染だからと言ってずっと一緒では無い事を今よりも幼かったけれど私は知ったのだから。


「今年も一緒だと思う?」
「そろそろ別のクラスになりそうだけど、また一緒なんだろうな」
「お前とクラス一緒なの、何年だ?」
「8年。ちなみに幼稚園も入れたら11年」
「長いな」
「長いね」


その間、私は圭介とずっと一緒だった。


「ここまで続いたらいっそどこまで続くか見て見たいな」
「確かに」


幼稚園の時はクラスは2つ、小学校は3つ、中学校は6つ。ずっと一緒の確率は約20万分の1。それがどれだけ低確率なのか、算数から数学を習うようになった私も理解できる頭になった。


「ま、行けばわかるだろ」


圭介が私の腕を取る。そして。


「GO!」


昨日歩いた桜並木の続く学校までの坂道を一緒に駆け上がるのだった。




今年もよろしくと言われるまであともう少し。