他の学校がどういう日程なのかわからないが、うちの学校の3年生は5月の始めに修学旅行がある。その上、5月の終わりには体育祭が控えていて、新学期早々からかなり忙しい。高校受験の関係でこんな時期らしく、ゴールデンウィークの後は旅費が安いらしい。そうが言っていた。


俺、山口圭介の知るトリビアの大半は頭の良い幼馴染から聞いた事だ。そんな幼馴染との腐れ縁は今年も記録を更新した。同じクラス、そして同じ班、つまり修学旅行も一緒に歩く訳である。


部屋の真ん中に東京地図を広げる。俺の手には6枚の用紙。の手には分厚い本。


「坂田が原宿、新宿、池袋」
「・・・うん」
「谷原がお台場」
「・・・うん」
「喜多村が六本木」
「・・・うん」
「下崎が青山」
「・・・見事に皆バラバラだね」


俺の手には6人分の東京観光の希望用紙。の手には分厚い時刻表がある。


「後は俺とか・・・・って、これ」
「どうしたの?」
「いや、なんつーか・・・」


既に読み上げた4人分の用紙を床に置いて。片手に俺の分、もう片手にの分。見比べれるように並べて見せる。


「あっ」


が面白そうに笑った。紙には示し合わせたようにそれぞれに『上野』『浅草』の字が書かれていた。




お茶を持って来た母さんから雷おこしを頼まれるまであと3分。




上野や浅草と言う下町情緒が似合う男、山口圭介