学校行事と言う物は生徒の気持ちを高揚させる物らしい。


まぁ、わからなくは無い。俺も夢の王国を満喫しまくったし。リベンジと称してメリーゴーランドにも乗ったしな!まぁ、流石に野郎1人で乗る勇気は無かったから、幼馴染を巻き込んだけど。


そんな俺、山口圭介は現在宿泊先のホテルの2階のロビーに来ています。ちなみに俺達の学校の宿泊場所は4階から上になってます。


他の宿泊客の迷惑にならないよう、2階3階に立ち入る事は禁止。そう旅のしおりにも書かれているし、ホテルに到着した際、バスの中で担任にも念押しされた。それなのに今俺はここに居る。所謂呼び出しを言う物を受けて。


同じ班の男子、谷原と坂田と部屋でTVを見ていたら、控えめに2回ノックの音がした。てっきり同じクラスの男子かそれでなければかと思ってドアを開けたら、そこにいたのは見知らぬ顔。少なくとも同じクラスの女の子ではない。


「あの・・・」
「何?」


俺の身長は172cm、クラスでも高い方。大抵の女子は見下ろせてしまうが、目の前の子も例外ではなく。俺に見下ろされた女の子は緊張した面持ちで「伝えたい事があるんだけど」と言った。


「伝えたい事って?」
「あの、ここだとあれだから、2階のロビーに行かない?」
「2階って立入禁止だろ?」
「え、や、でも、皆、行ってるよ」


苦し紛れに目の前の女の子が言い訳を口にする。皆行ってるからって言ったって、もし先生に見つかったら怒られるの嫌なんだけど。俺も男だから女の子から声を掛けられるのは嬉しいよ。そりゃ。でも、場所とかその辺、気にして欲しいんだけどな。


いつの間にか表情がやや険しい物に変わっていたらしい。目の前の女の子は俺に少し怯えながらも「でも、あの子、待ってるし」と意味不明な事を口にする。


しばし考えて言葉の意味を理解する。どうやら俺に用があるのは、目の前のこの子では無く2階のロビーで既に待っている子らしい。面倒な事になったと目の前の女の子を眺めながら髪を掻いていると、不意に後ろから声を掛けられた。


「圭介」
、どうした?」


俺達の部屋は5階。達、女子の階は7階だ。用が無い限り、男子は女子の、女子は男子の階に出入りする事すら禁じられている。


「家に電話したらおばさんが圭介に伝えて欲しいって母さんが言ってた」
「母さん、何って言ってた?」
「夢の王国でお菓子もお願いって」
「・・・買って置いて正解だったな」
「それから上野に行くなら、駅前に美味しいドラ焼きあるから、それも」
「・・・息子の小遣い減らすなよな」
「それじゃあ、伝えたよ」


戻ろうとした時、ようやくは俺の目の前の女の子に気が付いて。女の子を見てしばし黙った後、


「もう先生達の宴会始まったみたいで、見回りは23時だからそれまで大丈夫だよ」


と、笑顔でお節介な一言を残して去って行った。


さんって生徒会長やってるから、もっと生真面目な人だと思ってた」


2階のロビーまで一緒に歩く女の子(名前聞いてねぇからわからねぇ)がそう呟くまであと少し。