学校行事中に出来るカップルの数は多いらしい。5階から戻る時、男子専用の階であるのにも関わらず女子の姿がチラホラ見えた。


圭介の所に伝言伝えに行ったら、見覚えのある女子が1人。今から圭介に告白するのだったのだろうか。余計なお世話だったかもしれないけど、あの子も必死な顔してたからこれで良かったのだと思う。


私、は1人エレベーターの中で溜息を吐いてしまいました。凄いよ、告白するって事って。私は幼馴染の関係が崩れる事すら恐れてるのに。


部屋に戻れば喜多村さんや下崎さんがいる。浮かない顔のまま戻りたくないので、エレベーターの7階で降りると休憩室に立ち寄った。自販機とソファーの置かれた一角。誰の姿も無い事を確認すると、ソファーに身を委ねた。やや硬さを感じるものの、少し横になった事で気分は少し良くなった。


「えー、志保ってば木島君に告白ったの?」
「うん、OK貰っちゃったー」
「いいなー」
「そういう美加はー?」
「高柳君、2組の加賀さんに呼び出されてた」
「マジ?加賀さんと付き合っちゃうのかな?」
「でも、高柳君、好きな子出来たみたいな事言ってなかった?」
「・・・案外、美加の事だったりして」
「だと良いけど、違う気がするんだよねぇ」
「しかし、明日の午後には帰りの新幹線じゃん。皆、頑張ってるよね」
「そうだね。さっき2階のロビー行ったら山口君や君も居たし」
「うちのクラスの男子、かっこいい人多いよね。あの2人にも彼女出来るのかな?」


廊下を歩きながら話す女子の声が聞こえた。私の居る休憩室は廊下の突き当たりの角で、彼女達の所からは死角部分になっていて、私の存在に気付く事無く彼女達はそのままどこかへ行ってしまったようだ。


「女の子って凄いわ・・・」
「何かあったのか?」


ぽつりと漏れた呟き。誰に言った訳でも無い言葉に返事が返って来ると予想してなかった私は、弾かれたように顔を上げた。そこには見慣れた顔。


「圭介?どうしたの?」
「あ?うん。逃げてきた」
「は?逃げる?」
「色々あってさ」


詳しく追求されたくない話題のようで、圭介は手にした缶ジュース2本のうち、1本を私に渡すと、ブルタブを引いて開けると一気に飲み始めた。頂きます、と圭介に一声掛けた後、私もジュースを口にする。


先程の女の子とはどうなったのか。何故、圭介はここに逃げて来たのか。気になる事はあるけれど、こうしてまだ居られるなら良い。


覚悟はもうしてるから。


その言葉を飲み込むように、私は再びジュースを喉に流し込んだ。