退屈な国語の時間。定年間近の教師が朗読するのは、古典と言う生徒の眠気を増す物だった。ルーズリーフから顔を上げれば、何人か居眠りをしているクラスメイトの姿。それを気にせずに朗読する教師に感心しながら、私はルーズリーフを折り畳むと前の席の女子(比較的仲が良い子)の背中を軽く叩くと「これ、まで」と折り畳んだ紙を手渡した。


私の名前は。体育祭では青組のダンスリーダーを担当しています。


「今日、家に寄って良い?」


その1文だけ書いた紙は無事にの手元に渡ったようで、私の方を見るとこくりと頷いた。




そして放課後になり、下校時間になり。珍しく練習も無く団長として準備作業をしていた山口君と一緒に、3人での帰り道。山口君も一緒にと頼んで、の家にお邪魔する事に。


「お茶入れて来るね」


そう言って階段を下りて行った。山口君と2人きりにされて、急に緊張し始めたけど(山口君はに気があるの知ってるけど、かっこいい人には違いないし)山口君はそんな私の心境を知る筈も無く、机の横のマガジンラックに手を伸ばすと雑誌を1冊取り出し(サッカー雑誌なのは流石だ)(の部屋にサッカー雑誌があるのも凄いけど)(ある場所知ってる山口君も凄い)藍色のベットカバーの掛かったベットにダイブして(のベットなのに・・・)寝そべって雑誌を広げ始めた。


(緊張した私が馬鹿だったっ!)


恋愛感情あるなしに問わず、かっこいい男の人の前だとちょっと緊張しちゃうのが女の子(だと思う)。しかし、目の前のイケメンの取った行動に緊張はどこかに飛んで行ってしまったみたいで、なんだか笑いが込み上げて来た。


「どうしたの?さん?」
「あはは、山口君ったらここの部屋なのに」


耐え切れず笑いながら答えると、「ああ!」とちょっと間抜けな表情に変わった山口君は、


「いつもの癖でやってしまった・・・。さん、見なかった事にしてくれる?」


と言い、それがまたツボに入り、笑いながら「無理」と声を絞り出して言ったのだった。


この私と山口君のやり取りはがお茶を持って来るまで続いた。