学校が体育祭だろうと文化祭だろうと、ユースの練習はいつも通りある。大抵は土日にあるユースの練習、今日は平日の練習の日。授業が終わり、体育祭の準備を始めるクラスメイトを尻目に、俺は帰る支度をする。準備の総指揮は頼りになる幼馴染に任せて、皆の邪魔にならないように教室を出た。
俺、山口圭介の日常は学校行事が来ようと変わりません。理解してくれるクラスメイトと協力してくれる皆(特に)には本当感謝しています。
学校から1度自宅に戻って、学校鞄の代わりにスポーツバックを持って向かった先は練習場。自宅から最寄駅まで徒歩10分。最寄駅から目的の駅まで30分。目的の駅から練習場まで徒歩3分。そこで汗を流し、練習が終わるとまた同じように帰るのだけど、練習に加えて帰る時間の電車が通勤ラッシュと被る事もあって、帰る頃には体中クタクタだ。
「ただいまー」
帰って台所に足を踏み入れると、台所で夕食の準備中の母さんが顔を上げる。
「ちゃんが来てるわよ」
「部屋?」
「圭介の部屋よ」
その言葉に頷いて、2階の階段を上る。2階の突き当たりの部屋が俺の部屋だ。時々、こういう事があるから下手に散らかしておけない。お陰で部屋はそれなりにいつも片付いている・・・と思う。部屋に入ると、勉強机の椅子には腰掛けて小説を読んでいた。漫画で無い辺りがらしい(と、前に言ったら漫画も読むよ、と言われた)
「あ、おかえり」
「ただいま」
エナメルのスポーツバックをいつものフックに吊り下げて、ベットにダイブ。今日も頑張った、俺。
「お疲れ様。頑張ってるね」
「まーな」
好きだから頑張っている。好きだから頑張れる。でも、俺達の世界では頑張るのが普通の事。まして上を狙うなら尚更。だから頑張る。力の限り。でも、たまには誉められたいのです。だから褒めてくれるこの幼馴染とずっと一緒に居るかもしれない。
「体育祭の今日の進行具合、紙に書いて来たから目を通して。頭の中に叩き込んでね、それ。それからやっぱり団長が作業見に行くと士気も上がるから、明日以降、帰る前に準備ちょっとだけ見てから帰って貰える?」
優しくて頼りになってそして容赦無い。そんな俺の幼馴染。
でも、こんな幼馴染が居るのは俺の中で結構な自慢である。
口には絶対出さないけどな。