体育祭実行委員長が壇に登る。グラウンドに立つ生徒の中に緊張が走る。


『第1位は・・・』


その結果発表を、私、は保健医の居る簡易テントの中で聞いていました。足は思った以上に酷いらしく、病院に行く様に保険医に念押しされました。後で医者に見て貰おうかと思います。


『第1位、赤組!』


その言葉に赤組(と思われる一団が)(治療用テントからはグラウンドの様子が見えないんだよね)歓声と共に飛び跳ねる。その様子を静かに私は聞いていた。私の左足には湿布が貼られ、包帯が巻かれた状態。後で保健室から松葉杖を借りる予定で、体育祭が終わるまで(と言っても後は結果発表だけだけど)ここで安静にするように保険医から言い渡された。


青組は第2位だった。第3位は緑組。団長3人が前に呼ばれる。その様子は見えないけれど、きっと良い笑顔で圭介は2位の表彰状を受け取っているに違いなかった。


そして最後にMVPの発表。判断基準はわからないけれど、校長と教頭と来賓の人達の基準で決まるMVP。過去のMVPは優勝チームの団長が名を連ねている。赤組の団長の名前を思い出していると、体育祭実行委員長が高々にその名前を読み上げた。


『山口圭介』


青組が歓声を上げる番だった。第2位の発表より大きいかもしれない。保険医以外誰も居ないちょっとした閉鎖空間。誰も見てないし、聞いてないんだろうけれど、拍手を送ってみる。


『同じく、


「はぁ?!」と思わず声を上げてしまい、テント内に居た保険医も驚いたように(結果か私の声かどちらに驚いたのかわからないけれど)目を丸くしていた。まさか私までMVPだとは。青組の陣地からここまで離れているのに、それでも大きな歓声が聞こえる。


ああ、きっとこれは青組の皆の声だ。保険医の先生には悪いけど、治療しに来るの後にすれば良かったと後悔していると、


!」


走って来た圭介がテントの入り口から顔を覗かせた。圭介の手を借り立ち上がろうと思ったのだが、圭介の視線は下の方、私の包帯が巻かれた足を凝視していて、「しゃーねーか」と独り言を呟いたかと思ったら、パイプ椅子に座って居た私の体がふわりと宙を浮いて・・・。


(宙を浮いて?!)


圭介の行動に少し遅れて状況を把握した私は、焦ってバタバタと手足を動かすものの、「落ちたら危ない」と圭介はおろか保険医のお姉さんにまで言われ、この状況を渋々受け入れる事にしたのだが、テントを出てグラウンドを移動する時に、当然周囲から冷やかされる事となり、内心深い溜息を吐くのだった。


校長の前まで来た時、流石にこの状態では(世に言うお姫様抱っこと言う物だ)不味いと圭介も思い降ろすのかと思ったのだが、「ああ、そのままで結構」と校長自ら制止し(そんな気遣いは要らなかったのに)、硝子のトルフィーを2つ私が受け取る事になったのだった(圭介はこの状態につき、両手が塞がっている)。


なお、そのまま青組陣地まで連れて行かれ、クラスメイトから冷やかされて、精神的に非常に疲れた体育祭は幕を閉じたのだった。