興奮冷めやらぬまま、体育祭は終了。明日は振り替え休日の為、お休み。明日打ち上げ行こうよと誰かが提案したようで、話が徐々に纏まって来た所で俺達の所にも話が振られて来た。
「さんも山口君も明日打ち上げ行こう!」
今回の幹事役を買って出た時田さんの言葉に、は「折角だけど」とテーピングされた足を指差して
「ちょっと不自由なもので、今回は不参加で」
と言った。
「そっか〜山口君は?」
「ん?明日は家の用事があって無理。俺も不参加で」
「MVP2人不参加か〜。残念。さんお大事に。山口君、お疲れ様」
「時田さんもお疲れ様」
「幹事頑張れよ」
時田さんの後ろ姿を見送ると、松葉杖に手を伸ばす。それを見て、俺、山口圭介は自分の鞄と幼馴染の鞄を持ちました。
「持ってくれるの?」
「当たり前だろ」
「ありがとう」
松葉杖でのの歩調に合わせて歩く。擦れ違う同級生や下級生に話し掛けられる度、「今日はお疲れ」と言って学校を出た。
「ただいま」
「こんにちわ」
の家に最初に行くと、家の奥からスリッパの足音が聞こえて、おばさん(どう見ても20代後半でと並ぶと姉妹に見える)が現れたけど、松葉杖を突くの姿を見てクルリと方向転換をすると「パパー、が怪我して帰って来たー」と家の奥に居るおじさんを呼びに走った。
「・・・おばさん、相変わらずだな」
「まぁね」
苦笑するが玄関に座り込み、靴を脱いでいると奥からおじさんが出て来た。
「ただいま、父さん」
「お帰り。・・・足を怪我をしたと聞いたんだが」
おじさんの視線が包帯を巻いた足に注がれる。
「学校の保健の先生は捻挫って言ってた」
「ふむ」
の説明を聞くと、おじさんに「2人とも中に入りなさい」と勧められ、リビングに移動した。リビングに行くとうちの母さんも何故かそこに居た。
「あら、圭介」
「母さん、こっちに居たんだ」
「そうよ。久しぶりに両家でお食事会しようって盛り上がっちゃって」
盛り上がった相手は勿論の母親だ。母親2人、リビング続き台所でご馳走を作っていた。はおじさんに呼ばれ、足を見て貰う所だった。(の父さんは腕の良い外科医だ)(の性格はおじさん譲りだと思う)
「母さん、俺、1回家に戻る。シャワー浴びたいし」
台所のカウンターから「わかった」と母さんの声。俺はの鞄をリビングに置くと、1度家に戻る事にした。
シャワーを浴びて再びお隣にお邪魔すると、うちの父さんも来ていて(その代わりがどこかに行った)
(多分風呂だろう)、おじさんと仲良く酒を飲み交わし、母さんはおばさんと料理の話で盛り上がり中。俺はいつものように空いた席の1つ、父さんの隣に座るとテーブルの料理を皿に盛り食べ始めた。(あ、から揚げは母さん作ったな)(こっちのサラダはおばさんの味だ)大人の会話に入れない俺は(父さん達はゴルフの話だし、母さん達は料理の話だし)目の前のご馳走を食べながらTVの画面をぼんやりと見ていると(サッカー中継やってたら良かったのに)ようやくが姿を現して、おじさんに湿布と包帯をして貰うと俺の目の前の席に座った。
「足、大丈夫か?」
「うん、ただの捻挫。1週間で治るって」
「ふーん、無茶するなよ」
「しないよ。ただ・・・」
「ただ?」
「最近、運動不足だったからまた体動かさないと」
「それならジョギングは?」
「俺、今もやってるし」と言えば、「そうだね」とも乗り気の様子を見せる。それを見ていたらしいうちの父さんが、「お、相変わらず仲が良いな」と豪快に笑い声を上げた後、おじさんに「で、式はどうする?」とからかうように尋ねた。
「私は教会の方が良いな」
「えー、やっぱり神前でしょ?」
おじさんとおばさんがにこにこと話す。式が何の式なのか理解出来ず、に小声で尋ねると、「ああ、大人の遊び」と答え、続け様に「関わると玩具にされるよ」とは言った。
玩具の単語に不穏な物を感じ取り、再び小声で「玩具になる前に避難して良い?」と尋ね、コクリと頷くに肩を貸して、「俺ら上に居るから」と伝えて2階のの部屋に移動したのだった。