「しっかし、ちゃんはうちの圭介をどう思ってるのかねぇ」
ビール片手に圭介の父が呟いた。
「・・・見ればわかるだろう」
「は圭介君以外眼中に無いわよー」
の父母が答える。そこに付け加えるように口を挟んだのは圭介の母だ。
「うちの圭介もちゃん以外興味無いものね」
「5歳の時にちゃんのお嫁さんになるって言ったしな」
あははと笑って思い出話を1つ話題に投下したのは圭介の父。ああ、そういえば、と口々に親達は昔話に花が咲き、最終的には「赤ちゃんの頃は本当可愛かったわー」と言う話まで行き(家も山口家も子供は1人である)
「、早く孫を産んでくれないかな」
と、の母が酒の勢いもあってか爆弾を投下した。
「・・・子供達が居なくて良かったな」
そう言ったのはの父だ。いつかは2人が恋に落ち、結婚してくれたらと言うのは構わない。しかし、今の妻の発言は直球過ぎたとの父は思った。あははと笑い飛ばす圭介の父母。顔は真っ赤で良い具合にアルコールが回っている。
「あはは、今のあの2人が聞いたら顔真っ赤にしてたぞー」
「ちゃんはクールだから呆れ顔かもねー」
「はああ見えて奥手でそういう知識まったくないから、絶対顔赤くしてたわよ」
あはは、と笑い合う3人を見て、の父は内心溜息を吐いた。
(何で俺はザルなんだろう)
今まで生きて来てこれ程自分が酒に強かった事を後悔した事は無い。ちらりと廊下に続くドアを見る。先程、階段を下りる音がしたが、廊下で止まったままだ。娘のならば、この状況下でも涼しい顔で入って用を済ませて行くから、おそらく廊下に居るのは圭介の方だろう。
(頑張れ、未来の息子よ)
夢だった息子とのキャッチボールをお隣さんの息子で済ましたの父は、娘をあげる気満々であり、今後も妻と山口夫妻と共に見守るつもりなのだった。
「は今の関係が壊されるくらいなら今のままが良いみたいだから、進展するには圭介君に頑張って貰わなきゃね。こうガッツリ行って欲しいわね。キスの1つでもしてくれたら・・・」
廊下で物音がしたのをの父は聞き逃さなかった。まるでそれは壁に頭をぶつけたような音で、しばらくして階段を上る音が聞こえた。
(強く生きろよ)
酔っ払い3人を見て苦笑いを浮かべながら、の父はグラスのブランデーを胃に流した。
「おかえり、圭介。・・・顔赤いけどどうしたの?」