君、恋人居たんだね」


クラスメイトの誰と誰が付き合ったと良く女子が話すのは耳にするが、が他人の恋愛話を口にするのは初めてな気がする(俺の前では間違いなく初めてだ)。


俺、山口圭介は少し混乱しています。原因はさっきのとの会話。多分、修学旅行の時、あの女の子(名前忘れた)(いや、あの発言が衝撃的過ぎて頭真っ白になったんだって)にあの一言を言われてなかったら、多分、いや間違いなくの言葉に怒っていたと思う。それだけの言葉は的確に俺の痛い所を突いて来た。


さんは山口の何?」


そう聞かれたら必ず俺はこう答えている。幼馴染だと。ただにだけ初めて言った。大事な幼馴染だと。大事が付くと付かない、ただそれだけの話だけれども、のあのボールをカットしに掛かる真剣な眼差しを向けられて、嘘はつけないと思った。(はサッカー部キャプテンでDF、センターバックでリベロもこなして、俺から見ても凄いプレーヤーだと思う)だけど実際に言葉にする程、俺の中での存在は大き過ぎて、言葉に出来なくて。だから大事だと付け加えた(それだけでも結構恥ずかしかったけどな)。のその後の表情や言葉から察するに、多分、俺の言いたい事は半分も伝わっていなかったんだと思う。まぁ、そうだよな。言わなきゃわからないよな。にすら伝わってない時だってあるんだから。体育祭でMVP取って、しかもも一緒で。興奮の余り抱き抱えて運んだけど、今冷静になって考えると、凄い事やったんだよな、俺。テンション上げ過ぎると何するかわからないって千裕やスガに言われた事あるけど、ああ、ようやくわかった気がする。(悪い千裕。これからは気をつける)




恋人を今欲しいかと言われたら正直微妙だ。俺は今はサッカーが楽しいし、休みの日は大抵練習か試合でデートなんてしてる暇も無い。あったとしても久々の休日だからゆっくりするか、家を手伝うかしたい。あー、でもの存在って本当俺の中ででかいな。がもし居なかったら、恋人欲しいって思ったのだろうか、俺。・・・駄目だ。が居ないって前提自体が考えられない。


「・・・圭介?」


心配そうな顔でが呼ぶ。思考が途切れ、一気に現実に引き戻される。


「ああ、悪い。ちょっとと話してた事思い出しててさ」
「珍しく話し込んでいたね」
大先生からありがたいお話を賜ってた」


大先生の所で、が笑う。あー、そういう風に笑うと子供の時のの笑顔思い出すなぁ。俺、あの頃、の笑った顔好きだったんだよな。


(・・・じゃあ、今は?)(今、見た笑顔についてどう思う?)


可愛いと思う。それから・・・。


・・・ああ、そういう事か。何となくわかって来た気がする。俺が今どう思っているのか。これから先どうして行きたいのか。ああ、本当、先生様々だ。もう足向けて寝れないな(元から向けないけど)。


「なぁ、
「何?」
「俺、もう少ししたら言いたい事あるんだけどさ。その時は聞いてくれないか?」
「・・・私に?」


不安そうに少し目を細める。その姿にの忠告が頭を過ぎる。ああ、、お前の指摘は正しいのかもしれない。なるべく不安にさせないよう、頭を撫でる。途端、ピクリと肩を揺らす


に聞いて欲しい・・・つーか、が良い。・・・駄目?」


夕日に照らされた俺もも顔がオレンジ色に染まっていて、本当の顔色なんてわからない。ただその時の俺の顔は間違いなく赤くて、も赤かったら良いなと切に願う。


の笑みを見るまであと・・・。