体育祭が終わって、教室を出て、山口に発破を掛けて。学校を出て、時計を見ながら駅に向かって。事前に買った乗車券と特急券を重ねて改札に入れた。


ホームにはまだ目当ての列車が来ていなかった。俺、は列車が到着するまでの時間、本を読んで過ごそうと鞄を開けようとしたのだが、


「ハーイ、お兄さんこれからお暇?」


俗に言うナンパと言うものをされた。聞き覚えのある声に振り帰ると、そこに居たのは間違いなく自分の恋人だった。東京で落ち合う筈の。


「・・・もしかして体育祭見に来てた?」


俺の問いに恋人は笑顔で答えた。(俺の恋人ながら相変わらず食えない人)(・・・いや、こういう人だからこそ俺と付き合えるんだろうけれど)


かっこよかった。最後のリレーの時とか鳥肌物だった」
「そう言って貰えると嬉しいけれど、俺よりアンカーとその前の子、凄かったでしょ?」
「MVP取った子達?あの子達も凄いね。男の方はジュビロの山口圭介だよね?」
「うん」
「怪我した恋人をお姫様抱っこで運ぶなんて、ステキだね、彼」
「あー、あの2人ね。まだ付き合ってないんだ」
「あらま」
「ま、時間の問題だとは思ってるけどね。見ててまどろっこしいし、擦れ違ってばかりだからちょっと発破かけて来たよ。これで少しは進展があれば良いんだけど」
がそこまで気に掛けるなんて珍しいね。何?気に入っちゃった?」
「気に入っちゃったと言うより、昔の自分達を見てるような気がしてね。応援したくなるんだ、そういうの」


その言葉に俺の恋人は、普段のポーカーフェイスを崩して柔らかく笑った。