君に誘われてやって来たのは可愛らしい喫茶店。てっきり大手チェーン店系の喫茶店だと思っていた私は、君の方を見たけれど、君は気にせずに中へ入って行った。その後にが続く。カランカランとドアの乾いた鈴の音を立てて、私、も中に入った。通された席に腰掛け、店内を見渡せば話に花を咲かせる女性客ばかりだった。
「美味しいー」
が1口食べて破顔する。手には長いスプーンがあり、目の前には大きなパフェ。私の目の前にはチョコケーキとコーヒー。君の前にはタルトと紅茶があった。
「て、言うか、君が甘い物平気って何か意外」
「そう?何か頭使うと無性に欲しくなるんだよね」
「だから飴玉持ち歩いてたんだ」
「そうそう」
「君の彼女さんも甘い物好きそうだね」
そう言った私をが心配そうに見つめる。「大丈夫」と笑うと今度は君が大きな溜息を吐いた。
「無理に笑わなくて良いんだよ」
ああ、また心配を掛けてしまった。
「は結構溜め込むタイプだからね。この際、どんどん吐いちゃいなよ」
「これって女の子トークって奴だね。俺、邪魔ならどっか行ってようか?」
「君ならOKっしょ。あ、彼女の話とかしてよ」
「良いけど周りには内緒だよ」
(・・・これってもしかして恋愛トーク突入モードですか?)
冷や汗を掻きながら動向を見守っていると、
「じゃあ、1番手が私で、2番手がで、最後は君ね」
とが言い、最早逃げられないと悟った私は、
「遅くなりそうなので家に電話掛けさせて下さい」
と言うしかなかった。
悩みという物は人に聞いて貰うだけで大分すっきりする。この気持ちが何なのか気付いてしまった私には、相談相手など皆無に等しいと思っていたのだが、(母親とか相談は無理だし、クラスメイトもちょっと・・・)彼女持ちだと少し前に判明した君と、夏休み前に彼氏の出来たは相談相手には格好の相手だったようで、から始まった恋愛トークは彼氏、鈴木君との馴れ初めから始まり、それはもうここの菓子くらい甘い話で、この後、あまり報われてない私の恋愛話をするには気が重かったけれど、2人共親身になって聞いてくれたので、すらすらと言葉が出て来て、気が付けばこの関係を壊す事を怖れた小学校時代の話まで口にしていた。
「本当、山口って肝心な事は言ってなかったんだ」
「が不安になるのもわかるわ〜」
同意されたものの、今の状況を考えれば嬉しいと思って良いのか微妙な所だ。
「あれだけに依存してる癖に肝心な事はだんまりってどういうつもりなのかしら」
「違うよ、。依存してるのは私の方だよ」
「うーん、俺から見ると両方って感じなんだけど」
君がそう言って紅茶を飲む。紅茶を口に運ぶ仕草はとても優雅で、視線を感じ店内を見渡せば君を眺める女性客がちらほら居た。
「もうここはから告白するしか無いんじゃないの?」
「・・・そうだね」
最後にはそこに行き着くのだろう。結果がどうあれ、この気持ちに決着は付けれる。待ってて欲しいと言われたけど、そろそろ限界なのかもしれない。
「・・・そうだね」
湧き上がる不安を押し戻すように飲んだコーヒーは、砂糖入りなのにとても苦く感じた。