「みんなは将来何になりたいですか?」
「せんせー」
「はい、かずき君」
「僕、消防士さんになりたいです!」
「火事からみんなを助けるんだね」
「せんせー」
「はい、ちはるちゃん」
「私はケーキ屋さんになりたいです」
「色んな美味しいケーキ売る人になるんだね」
「せんせー、せんせー」
「はい、けいすけ君」
「僕は、将来、ちゃんのお嫁さんになります!」







トレセンが終わり、ナショナルトレセンのメンバー25人が選抜されて初の合宿。トレセンで色々とやりすぎたせいか、ナショナルトレセンチームのマネージャーに選ばれた私も今回の合宿に参加していたのだが、夕食に同席になった藤代くんと日生くんに誘われて、圭介と共に王様ゲームに参加して


「ハイ、俺が王様!えーと、7番が幼稚園時代の1番恥ずかしい話をする」


と、王様である若菜くんの命令に7番の私が従う事になったので、恥ずかしい話を披露したのだけども・・・。


「って、、それ、俺の話だろ!」


と、圭介に怒られる事になった。


「いや、思い出せる限り思い出してみたんだけど、1番ってこれなんだよね」
「・・・他に何かなかったのかよ」


圭介がガックリと肩を落とす。それを見た周りがまた笑い出した。


「お嫁さんって所がポイントですよね〜」


すぐ傍に居た須釜くんが楽しそうに口にする。


「俺、幼稚園の頃、将来サッカー選手になるって言ったぜ!」


と、藤代くんが思い出話を口にし、俺もと口にする者、俺は違ったと口にする者と様々だった。ふと遊びに来てからそれなりに時間が経っていると思い、時計を見ると、そろそろ部屋に戻らなければいけない時間に差し掛かっていた。


「そろそろ部屋に戻るね」


そう言って腰掛けたベットから立ち上がると、横に居た圭介も立ち上がる。また明日と言うみんなの声を背に部屋を出ると、左手を圭介に掴まえられた。手を繋いだ状態で合宿所の廊下を歩く。普段ならば他の選手の士気にも関わると思って、こういった場所ではこういった事はしないのだけど。


(ま、もう遅いし、良いか・・・)


ちらりと圭介を見ると、目が合い、柔らかく微笑まれる。嬉しくて笑い返すと、繋いだ手が少し強く握られた。


「ねぇ、圭介」
「ん?」
「私ね、恥ずかしかったんだよ」
「ああ、さっきの話か」


圭介がバツが悪そうな表情に変わる。どうやら男でお嫁さんと言った事は、相当圭介の中で恥ずかしい物だったようだ。悪い事をしたと思いながら、少し恥ずかしいがこの言葉を口にする事にした。


「そうだよ。だって好きな人にプロポーズされたんだから」





その後、割り当てられた1人部屋で


「さっきの言葉、凄い嬉しかった・・・」


と言う圭介に抱き締められ、なかなか離して貰えなかったのは言うまでも無い。