3年生になって早2ヶ月。誕生日順の席順だった為、誕生日が同じ俺と幼馴染は席が隣同士だった。教室の中央列の一番後ろの席。席にも隣の奴にも何の問題も無く(むしろ良い環境だと思う)(ちなみに俺の後ろはだ)俺としては席替えをせずに1年過ごしても良かったのだが、うちの副委員長がそれを許しはしなかった。


「さあ、ドキドキ席替えタイムよ!」


(そんなドキドキいらない・・・)




雨が降ろうと3年4組副委員長、時田のテンションは一向に落ちず、今日も絶好調のようだ。相変わらずのハイテンション・・・いや、いつも以上のハイテンションに七三、いや、田中も開いた口が塞がらないようで、(田中、頑張れ)呆気に取られている田中を尻目に、時田は箱を2つガサガサと音を立てて振り、「さあ、出席番号1番から引き給え」と箱を差し出した。(1つは男子用でもう1つは女子用なんだろう)(うちの学校は班で行動する事も多いので、男女各3名で1班作っている)


差し出された男子1番と女子1番のクラスメイトは、お互いに顔を見合わせながらも箱に手を伸ばしてクジを1枚取り出して後ろの席に回した。しばらくして俺の所にも回って来たのでクジを引き、に箱を回す。回した際、「さんとまた隣だと良いね」と小声でからかって来たので、チョップで応酬しておいた。


(余計なお世話だ)


横目でを見れば、は席替え自体にはさほど興味が無いのか、引いたクジを一瞥するとペンケースに入れてまた本を読み始めていた。壇上では黒板にクジの番号と符合するように、時田が席順表を綺麗に書いていた。書き終わった時田の「はい、この表の番号の通りに移動して下さい」の言葉にクラスメイトが動き出す。俺も鞄を手に持つと、クジの番号を黒板の表を見比べて席を探して移動する。



「あ、山口君。隣?」


移動先の隣には既に席に着いた水谷さんの姿。念の為、もう1度黒板とクジの番号を確認するが間違いなかった。


「隣みたいだ。よろしく」


そう告げて隣の席に座った。は偶然隣の席を引いたようで、


「あれ?隣、君?」
「・・・そうみたいだね」


と、後ろからこんな会話が聞こえて来たけれど、振り向かずに欠伸を噛み殺しながらこのホームルームの時間が早く終われと思うばかりだった。




その後、に「クジ取り替えたかったのに山口ったら先に移動するんだから」と言われちょっとだけ、いやかなり後悔したのは言うまでも無い。


急いで移動する必要なかったのにな。