校内の各所に張られた様々なポスター。その1つ1つを見ながら、廊下を歩く。
「何か、もう1年経つんだな」
「そうね」
張られているのは生徒会役員立候補者のポスター。活気ある生徒会を目指します。校則の○○を撤廃します。○○の自由化を目指します。そんなスローガンが飛び交う中、現在の生徒会長である幼馴染はこの騒ぎの渦中に居ながらも、のんびりとしていた。
こんにちわ、山口圭介です。現在は七月、生徒会選挙の真っ只中です。
「結構立候補者多いんだな」
ポスターの立候補者の名前を見る。今回の大本命と言われる現在の生徒会副会長の2年生を始め、2年生と1年生の名前がポスターの中で踊っていた。
「指名出来なかったのよね」
去年の生徒会役員選挙は閑散としたものだった。当時の生徒会長が役員でも何でもない、単なる一生徒に過ぎなかったを会長に指名し、補佐役他は会長の一任に任すという、過去に例の無い方法で選ばれたからだ。就任する前から一騒動あったのだが、生徒会長になる事を決めたはその手腕を遺憾なく発揮して・・・気が付けば誰しもが認める存在になっていた。(まぁ、の手腕も然る事ながら、に目を付けたあの生徒会長も凄いけど)
「生徒会が終わって、夏が来て、残りの中学校生活もあっと言う間に過ぎそうね」
立ち止まり、惜しむような眼差しで窓から校舎を見る。俺もその隣に立ち、校舎を眺めた。西日に照らされオレンジ色に見える校舎。創立50年は経っていて、壁や床はボロボロなのに、愛着を感じてしまうのは2年半ここで1日の大半を過ごしたせいだろうか。
「俺さ、推薦で磐田第一受ける」
驚いた顔では俺を見る。いざこうやって話すと結構照れ臭いもので、苦笑いを浮かべて誤魔化した。磐田第一高等学校は県内屈指の進学校で、学校で良くても20番内くらいの成績の俺には敷居が高い学校だけど、家から1番近くて、なによりも受ける学校で。少し前から担任と相談して、受ける事を決めた。
「・・・受かったら当分また一緒だな」
その言葉に嬉しそうに笑うに、やはり同じ学校選択して良かったとつくづく思うのだった。
その後、俺の担任以上に俺の成績や得意分野、果ては苦手分野までも把握しているこの幼馴染様は、
「今年の冬にはトレセン召集でしょう?それなら推薦で決めちゃいましょう」
と、教科書片手に俺の家で待ち構える事が増えたのは・・・嬉しくもあり複雑でもあった。
(でも、帰ったらお帰りなさいって言われるのはかなり良い)
磐田第一と言うのは架空の学校名(のつもりです)。ネットで検索したら現在ある学校の昔の名前だったようですが、架空世界の名門校と言う事でお願いします(ペコリ)。