「不味いな」
「不味いですね」
「不味いわね」


「女王の懐妊は喜ばしい事だが・・・・その、まだ未婚なんだろ?」
「結婚=国王ですからね。あの男がそんな面倒な事、望む筈がありません」
「未婚で懐妊ねぇ。子供の父親はカーティスで間違い無いのでしょう?」


「四十六時離れずに居るんだろ?あいつの隙を見て不貞を働く奴が居たら見てみたいな」
「ええ見てみたいです」
「確かに見たいかも」


「未婚懐妊でしょ。ヨシュア=シンク辺りがまたぐちぐち言ってくるんじゃないの?」
「ここぞとばかりに言って来るに決まっています。・・・もう、早く息子から引導を渡されないかなと思いますよ」
「スチュアートの事だから、もう準備は出来てるだろ。姫さんが女王になってから何かと取り立てて貰っているしな」


「一番良い解決方法はあの男に王座について貰う事です。その後に懐妊の触れを出せば良い」
「あいつが承諾すると思うか?」
「女王でも無理だったから、無理だと思いますよ」


「それにしてもよくカーティスの奴、ヨシュア=シンクを暗殺しないでいるよな。姫さんの苦労の大半があいつだろ?」
「女王の温情ですよ」
「家臣を殺さないでってか?」
「いえ、ヨシュアはスチュアートにやらせてやれ、と」
「・・・・・・・さすが姫さん」
「・・・・・・・さすがギルカタールの女王」


「カーティスの説得は女王に任せましょうか・・・」
「女王不在中の政はどうするんだ?」
「南北は幼馴染の彼らに頑張って貰いましょう。裏は今まで通り、ライルが。警備はカーティスが居れば問題ないでしょう。メル=シャワレとシャークで女王の定期健診を、国政は最終決断は女王に、それ以外の表の事は私が引き受けましょう」
「わかりました。シャーク、女王の懐妊の触れは安定期に入ってから行います。それまで秘密裏に」
「了解。メルの爺さんにも伝えておくぜ」
「では、そのように女王に報告して置いて下さいね。宰相殿」
「ええ勿論です、大臣殿」




全ての手配を終わらせ、報告に行けば、女王は妖艶な笑みを浮かべた。


「思った以上に早かったじゃない」
「優秀な人間が揃っているお陰で早めに手を打てたんですよ。あ、カーティスの説得は頼みますよ」
「うふふ、良いわ。動かないように私から言っておくわね」
「お願いしますよ。彼は貴方の言う事しか聞きませんからね」
「ふふ、愛されているから、私」


妖艶な笑みから一転。柔らかい慈母の笑みに変えた女王は、愛する喜びと愛される喜びを知る者にしか浮かべれない晴れ晴れとした表情を浮かべていた。


「ご馳走様です」


女王の唯一の親友でもある宰相は、苦笑いを浮かべながらも嬉しそうにそう言った。