久しぶりにその場所に足を運べば、何やらお取り込み中だった。
いつもなら回れ右でその場を後にするのだが、今日は少し事情が異なるように見えてさあどうしようと考える事、数秒。とりあえず手を貸す事に決めたは、手始めに考え中に暗器を投げつけて来た男を杖で昏倒させた。
「てめぇもここのギルドの人間か!」
「いや、違うけど」
問いと言うより決め付けに近い言葉を投げ掛けられたので、コンマ単位の速さで否定してみるものの、すっかり殺る気満々の彼らが耳を貸す筈も無く。突然現れた女をどうするか、あれこれと厭らしい想像を膨らませ言葉にする彼らをは呆れながら眺めていた。
「あーあ、好き勝手言っちゃって。カーティスが居ない時で良かった良かった」
「様、それは・・・・」
「良いんですよ、イーディット。あの人居たら大変でしょう。このセリフ聞いてたらきっと面倒な事を起こしますよ」
「ええ、きっと貴方の想像通りの事を僕はこの人達にしちゃいますね」
室内の温度が一気に下がった気がした。
すっとの背後に現れた男に、以外の全ての人間が硬直する。
「カーティス=ナイル!」
「カーティス様!」
一方から悲鳴じみた叫びが、一方から歓声が沸き上がる。しかし、当のカーティスはにっこりと笑顔のままで動かない。今を好機と見たのか、数人の男が目掛けて飛び掛って来た。狙いは自分ではなく後ろのカーティスだと言う事は、本人も理解しており、降り掛かった火の粉を払う為に杖を振り翳したが、それよりも先にカーティスが動いた。
崩れ落ちる男達。眉間にカーティス愛用のナイフが刺さって、一撃で仕留められていた。おそらく痛みすら感じなかっただろう。
「僕の大事な人に何をするんです。うっかり怪我をしたらどうするんです?」
カーティス1人にすっかり飲まれて、蛇に睨まれた蛙の様に固まってしまった男達は勝ち目が無いと悟るやいなや、足早に逃げ出して行った。
途端に詰まらない表情に変わるカーティス。周囲を囲む部下達を一瞥すると、「このギルドを襲った事を後悔させて差し上げなさい」と彼らに命じた。追跡に散り、周囲に感じられた気配が消えた。
「、怪我はありませんか?」
「何も無いよ」
「ああ、良かった。何かあったらあいつらを殺さなきゃいけない所でした」
「・・・・・部下くらい大事にしようね」
何にも執着出来ないと度々口にして来たカーティスだが、同じスラム街で一緒に顔を合わせて生きて来たギルドの部下達の事はそれなりに気に入っている素振りを見せているものの、それ以上に気に入っているのがである。部下達と、カーティスが2つを天秤に掛けたら即側に傾く事だろう。本当、何故気に入られたのか本人は今でもわからないと首を傾げているのだが。
「しかし、許せませんね」
「さっきの襲撃者達?」
「ええ」
カーティスが大仕事で出掛けた隙に、ギルドのアジトに襲撃を掛けて壊滅させる算段で男達はやって来た。誤算だったのは、カーティス抜きでも部下連中が強かった事だろう。
「あいつら、に向かって犯すとか嬲るとか弄ぶとか言いたい放題だったじゃないですか」
「カーティス・・・」
「僕ですらまだ何も手を出していないのに、まったく・・・」
「後半の台詞が無かったら、凄く格好良かったのに」
そんなの呟きすら、怒り心頭のカーティスの耳には届いていないのだろう。ブツブツと物騒な単語の数々をぶちまける彼を見て、は愚かにもアジトを襲撃した一味の行く末が安易に想像出来て溜息を吐いた。