こんにちは、鈴木だ。相変わらず6歳児やってるよ。

アンガスさんとは時々メールで近況を報告し合っている。アンガスさん自身も狙われているから、影でこっそりとだけどね!何でも不死者を監視する組織や不老不死の酒を狙う組織などあるとか。うっかりメールを見られたら私も漏れなくマークされるよね。対策としてプロテクトと暗号化と特定のパソコンで開けないとウィルスがばら撒くように設定したよ。最初にアンガスさんに説明したら、「お前、えげついな!」と凄いイイ笑顔で言われた。黒の組織の常套手段なんだけどね、これ。不死者にえぐいと言われるのは凄い不本意なので、これ以上は自重します。

本当ならばアンガスさんと接触を断った方が安全なんだけど、例の悪魔を見つけたら仲介してくれる話が魅力的過ぎた。勿論、タダじゃない。対価としてアンガスさんが見つけた謎のブツの鑑定をする事になった。・・・あの人、骨董マニアって言えば良いのかな。オーパーツとかそういうの大好きな人なんだよね。ストーンヘンジとか私に分析させようとしてたし。まぁ、全力で拒否したけどね。絶賛車椅子生活中なのに、この年で海外渡航とかしたく無い。何よりもああ言うのは謎のままの方が浪漫がある。って話が逸れた。

最初はこの対価で良かったけど、あまりに鑑定の数が多かった。ただでさえ1日に1回しか出来ないのに、得た情報を纏めるのに時間も掛かるから凄い手間が掛かる。そう愚痴れば、今後一切アンガスさんは自分が掛ける1本以外、あの眼鏡を作らないと誓約してくれた。私の魔眼で得られる情報の方が量が多いから、1本あれば充分らしい。

そんな訳でちょくちょく謎のブツが送られて来る。・・・魔眼の話、するんじゃなかったって本気で思ったね。今日も届いたよ。・・・毎回思うが、送り主のセティーナ=ウォーケンって誰?仲介者なのはわかったけど、アンガスさんの知り合いか。

さて、今日もセティーナ=ウォーケンさんから届いたよ。家の人間に説明が1番面倒だった。運良くウォーケンと言う名前の会社があったので、そこの社長夫人から珍しい物を見せて貰っていると言えば納得してくれたけどね。母に財閥の令嬢として失礼の無いようにと念を押されたよ。

今回のブツはあまり大きくなかったから思わず顔が緩んだ。大きさは6歳児の私でも楽に持てる程。中を開ければ真紅の高級そうなビロードの箱が1つ。いつもは妙な生物の化石や古ぼけた像だから、少し意表を突かれた気分だった。貴金属類はアンガスさんの趣味じゃないと思ってたのに、何て言うか・・・意外。

机の引き出しから愛用の手袋を重ねてはめる。指紋とか付くと面倒だからね。箱を開けると中には私の手よりも大きな赤い宝石が1つ。こういうの何て言ったっけ?ああ、そうそうビックジュエル!ビックジュエルだ!キッドに知られたら盗まれそうだよね。あー、でも、今のキッドはお父さんの方か。

しかし、アンガスさんは何でこの宝石を送って来たのかな?無意味な事は嫌う人だから、何かあるのだろうけれど。ま、鑑定するか。

手の中で輝く赤い宝石を凝視し、事前に掛けていた玩具の眼鏡に情報を映し出す。まず、最初に大量の化学式。次に必要とされる材料。そして生成方法。その全てが見事に半分のみ記されていた。ドッドッドと心臓が脈打つ。これを作ったのはセラード=クェーツ。アンガスさんと同じ不死者にして、錬金術師。

これはただのビックジュエルじゃない。不死の酒の生成法の半分を記した物質だ。これだけでは酒は完成しない。けれど一応それなりの効果がある。老いは止められない。けれど細胞が変質して、例え小刻みにされてもお互いに接着し、死なない。

完全なる生成法を知る不死者が1人、この宝石と同じ知識を持つ不死者が1人いる。彼らは良い。不死者と言う向こう側の人間だから。しかし、この宝石は向こう側にもこちら側にも移動出来る。つまりこれを巡ってこちらの人間が争うという事だ。しかも、この宝石は・・・。

宝石をしまい、箱を閉める。これは私の手に余る爆弾だ。このままいつも通りウォーケンさんに送り返すか。いや、万が一、輸送途中に奪われては堪らない。出来る事ならばアンガスさんに直接返したいが、どうすれば・・・?

ぐったりと机に寄り掛かり、考える。結局、妙案は思い付かず、鈴木家の中で1番大きな金庫に入れる事にした。


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セラード出しちゃった。セティーナ=ウォーケンは赤い男と青い女のヒロイン。人材派遣会社の社長さんをやっています。