こんばんは、鈴木です。私があの宝石を鑑定してから1日半経過しました。

今、現在、鈴木家は蜂の巣を突いたような騒ぎに包まれています。アンガスさんの緊急用の連絡先に何度もコールしましたが、繋がりません。ちょっと、アンガスさん!出ないとか緊急用の意味ないよ!!

さて、何が起きたかと言えば、我が家の金庫が破られました。祖父、父、母が警察と話し合っています。私も参加したいのですが、6歳児なので門前払いされました。ウォーケン夫人から預かった宝石がある金庫に入っているのは両親も把握済みです。我が家で1番大きな金庫は両親と祖父しか開けれませんからね。私も祖父に立ち会って貰って金庫の中に入れましたから。

良い子にしててね!と言われて良い子にしていると思うなよ!

そんな訳で母達がいる応接間の隣の部屋に侵入し、壁に聴診器を当てて盗み聞きしています。本物には劣るけれど、子供の玩具の聴診器だからって馬鹿に出来ません。感度良好です。良く聞こえます。対象年齢12歳以上の文字はまるっと無視です。

聞き覚えの無い男の声が聞こえます。どうやら警察の方のようです。

「これが金庫の中にありました」
「これは怪盗キッドのカード!!」

祖父、父、母の驚いた声が聞こえました。どうやら盗んだのは怪盗キッドのようです。警察の方が被害リストを読み上げて行きますが、その中に私が入れた宝石もありました。何でよりによって私の手元に来てすぐに盗まれたんでしょうね。見張られていたんでしょうか?それにしても盗んだのはキッドですか。・・・これはかなり不味いです。

私の知っているキッドは息子の方、つまり2代目の方だけです。工藤新一が江戸川コナンになり、キッドを追い駆けるようになった頃には、キッドは盗んだ宝石を確認しては持ち主に返却、もしくは本来の持ち主に返却していていました。しかし、今のキッドが返却しているかどうか不明です。キッドは義賊に近い存在ですが、物が物なので楽観視するには行きません。

とは言え、6歳児である私に出来る事と言えばそう多くありません。その中で有効な手と言えば1つしか無いのですが、あまりやりたくない手です。しかし、背に腹は変えられません。

私は聴診器を壁から離すと服の中に隠して部屋を出ました。慌しく廊下を往復する刑事さんと擦れ違いながら、やって来たのはリビング。電話機の置かれたチェストの1番上の棚を車椅子によじ登って開けます。

あった。幼稚園の緊急連絡網!・・・まさか園子と黒羽快斗が同じ組だと思わなかったよ。私が通ってた時、快斗は居なかった気がするから転園して来たのかな。

混乱乗じて家を抜けて1番近い電話ボックスに来ました。・・・来たのは良いけど、大人用だから受話器取れないよ!!ボックス内は狭いから車椅子も入らないから台代わりにならないし。テレカとかどうやって入れたら良いのさ!って、誰か来た!!

「お前、何やってるんだ?」
「それはこっちの台詞ですよ、アンガスさん!!」

今までどこに居たんですか!!連絡取れなくて困りましたよ!本当!!

「悪い。お前に送ったアレ、後からやばいブツだって気付いて急いで日本に来た」
「アレが何なのかわかったんですか?」
「いや。しかし、アレがジジイの持ち物って言うのはわかった」
「予想通りやばい物でしたよ!もう何で送って来たんですか!」
「悪い。次から気をつける」
「そうして下さいよ。・・・って、こんな事してる場合じゃなかった!」
「そう言えばこんな時間にお前、何やってるんだ?」
「アレが盗まれたんですよ!」
「あ゛?」

掻い摘んでアンガスさんに事情を説明すれば、アンガスさんは頭を抱えながら「俺に手伝える事は無いか?」と聞いて来た。手伝える事。そりゃ、これしかない。

「キッドに電話するから私を持ち上げて!」

何で世界でも有名な怪盗の自宅の電話番号知ってるんだよ。アンガスさんの呟きを聞こえない振りをしながら、暗記した電話番号のボタンを私は押した。

コールが数回。・・・繋がった。

「はい、黒羽ですが?」

大人の男の声だ。間違いない。

私はアンガスさんに黙るようにジェスチャーで伝えると、わざと高めの声で電話の向こうに喋り始めた。