今年の担任は一言で言うと熱血。何をやるにも全力がモットーで、生徒を引っ張って行こうとする教師だった。このくらいの年頃の生徒には慕われやすいタイプなのかもしれない。しかし、前世は享年20歳の私の精神年齢はそれなりに成熟していて、元からこう言った性格の人間を暑苦しいと言ってしまう程の苦手意識を覚えていた。こういうタイプは冷ややかな態度で接したり、噛み付くのは悪手だ。余計に構って来るのは前世で経験済みである。柳のように穏やかな態度で緩やかに受け流す。今年1年これで行こうと決めて黒板を見れば、端から端まで使って大きく競技名が書かれていた。ああ、そういえばあと半月くらいでクラスマッチだった事を思い出す。前のホームルームで本気に勝ちに行くと担任が言っていたが、今年から一定数に限って部活の競技に出ても良いらしく、野球部員が1名ソフトボール枠に入れられていた。部活出身者とそうでない人間ではまるで勝負にならないだろうと思ったのだが、どうやら盛り上がりに欠けるからという理由で決まったらしい。なるほど、四天宝寺らしい理由だ。


「ざいぜーん。うちのクラスでテニス部はお前だけだから、テニスに出て貰えんかー?」


名前の挙がった財前くんに周囲の視線が集まる。日頃の彼の性格から惟みれば、断る確率の方が高かったが、意外にも彼は文句の1つも言わずに承諾した。女子が僅かにざわつき始めたのは、テニスが男女混合種目だからだろう。彼は一体誰と組むつもりなのやら。


「出るのはええですけど、その代わり一緒に組む相手はこっちで指名してもいいっすか?俺もやる以上、勝ちたいんで」
「お、ええでー。財前は誰をご指名なんや?」


まさかの財前くんのパートナーご指名に一気に喧しくなる。誰の選ぶのかと思いながらぼんやりしていたら、名前を呼ばれて慌てて反応した。


「あ、はい?」
「お前、聞いてなかったのか?」
「え?財前くんのパートナーの話ですよね?」
「そうや。そんでその財前くんがをご指名したっちゅー話や」
「は?」


突然沸いて振って来た話に財前くんを見る。彼と目が合えば、彼はニヤリと底意地が悪そうに笑った後、悪いけど拒否権無いからと言われて溜息を吐いた。引く気の無い彼を説得出来るだけの手は無さそうだ。


「よろしゅう、
「やる以上、頑張らせて貰いますよ。財前くん」


当たり前やと彼は笑う。差し出された手を握り返し、半月後のクラスマッチに思いを馳せた。