目の前の人影がぶれたと思ったら、銀色の色彩が光沢のある黒に変わった。やや上向きだった目線は殆ど一緒になり、見慣れた5つのピアスが照明を受けてその両耳で輝いていた。


「ほな、始めよか?」


左手で持ったラケットを肩に置き、こちらを見て彼は微笑む。その姿にぞわりと悪寒が走った。


「すいません」
「なんや?」
「見た目は光くんに似てますけど、中身がぜんぜん違います。違和感強すぎて、正直見ててきついです。視界の暴力です。他の人にチェンジでお願いします」


その言葉に光くん(偽)の顔がくしゃりと歪み、光沢のある黒髪の色素がまるで空気に溶けたかのように元の銀色に戻った。


「お前さん、本当に財前の事、好きなんじゃな」


コート上の詐欺師と呼ばれる彼は、僅かに悔しさを滲ませた表情でこちらを見る。憂さ晴らしをしたいのか、言葉の端々に挑発めいた響きがあった。


「好き・・・?」
「なんじゃ違うのか?」


首を傾げた私を可笑しそうに仁王さんが笑う。私に自覚が無いと思ったのか。にぃっと口元に笑みを浮かべた彼は、いつペテンに掛けてやろうかとこちらを伺っているように見える。甘いと思わず口にしそうになった言葉を飲み込んだ。


「私にとって光くんは、代わりのきかない存在なんですよ。仁王さんにとっての柳生さんと同じような存在なんです。存在そのものが好ましい・・・いえ、愛してると言って良いでしょうね。ですから、やるなとは言いませんが、私の前で安易に光くんのパチモノにならない方がいいですよ。あの格好でフラフラしているのを見ると、思わずぷちっとやっちゃいそうです」
「・・・わかったナリ」


笑顔でラケットを突きつけてそう宣言すれば、仁王さんはぶるりと体を震わせた後、コクコクと頷いてみせた。


幸村みたいナリ。半ば無意識にそう呟いた彼に言いたい。後ろは確認しましょう、と。あ、光くん。わざわざこちらで手を下さなくても、立海の元部長さんがやってくれそうだよ。



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合宿中、仁王とヒロイン、即興でダブルスを組む。ヒロインと相性が1番良い財前に安易な気持ちでイリュージョンしたものの、駄目だしされて精神力をガリガリと削られてイリュージョンが解けてしまったり。ヒロインの自覚の無い愛の言葉に、財前はイリュージョンされて不機嫌だった機嫌が全回復。謙也がびびるほど、ニコニコ笑っていたら良いな。ヒロインは私の相方はそんなんじゃないわー!とご立腹中。本物の財前に宥められ、機嫌を直します。このシリーズのヒロインと財前は仲良くなればなるほどお互いに依存する。