小学校の頃、1度訪れた夢の王国。電気代がいくらかかっていそうだとか、どういう仕掛けになっているのとか、今思い返すと妙な事しか口にしていない筈なのに。それでも圭介が楽しそうに昔の事を話すから、あの時はあの時で良かったと思う私が居る。


私、はショップで両親のお土産を探しています。横に居る幼馴染をなるべく視界にいれないようにしながら。


「似合うか?」


そう言って圭介が頭に付けたのは、夢の王国のお土産の定番(?)のカチューシャ。黒く丸いねずみの耳と赤いリボンのついた物。似合わなくは無い。ただちょっと普段の圭介からは想像出来ない姿で、笑いのツボを刺激された私は口元と腹を押さえて笑った。


、笑い過ぎ」


呆れたように圭介は言うが、私が笑うのは至極当然の事だと思う。カメラを向ければノリ良くポーズまで取ってくれた。その瞬間をカメラに収める。


「母さん達のお土産どうしよう?」
「うちの母さんは雷おこしで良いんじゃん」
「んー」


考える事数分。私の提案に乗った圭介は、自宅用にクッキーを1箱買いにレジに並ぶ。その後ろに私が並ぶ。カチューシャをした後姿が否が応でも眼に入った。噛み殺せなかった笑い声が口から漏れる。


、笑い過ぎ」
「その姿はちょっとね」


肩を震わせて笑う私。圭介はそんな私をしばし見た後、すっと頭のカチューシャを外すと私の頭にそれを付けた。


「え?」
「あー、やっぱり女の方が似合うよな」


新しく出来た作り物の耳に戸惑う私。外そうと頭に手を伸ばすが、その前に圭介が私の手を押さえる。


「だーめ。写真撮るまで付けとけ」
「いいって、似合わないから」
「似合ってるって。それに・・・」


さっき俺の写真撮ったから、次はな。


そう言って私の手からカメラを奪う圭介の会計が終わるまであと数分。